先日、公証人の方を講師とした研修会が神奈川県行政書士会にてありました。
今年4月1日より「保険法」という法律が施行され、保険金受取人の変更を遺言によりすることができるようになりました。
実際の受取人の変更は、遺言者の方が亡くなった後、相続人(あるいは遺言執行者)が保険会社に通知して行うこととなります。
この法律が施行されるまでは、「保険金給付請求権は保険金受取人に固有の権利であって、保険契約者の相続財産に属しない」との最高裁判例があることから、交渉実務でも保険金に関しては遺言には入れないのが通常であったそうです。
ただし、この法律の施行により、すべての保険契約において遺言による受取人の変更ができるかというと、そう一筋縄ではいかないようです。
まず、保険法の規定は4月1日以降に締結された保険契約に適用されるものであって、それ以前に締結された保険契約には適用されません。
既存契約にも適用されるとの保険会社の約款変更があれば別ですが、そのように約款を改正した保険会社は1・2社程度だそうです。
ですので公証実務でも、既存契約については従来通り、元気なうちに契約を変更することを推奨するという対応は変わらず、「どうしても…」と言われた場合に、無理かもしれないことを説明したうえで記載することはあるかもしれないとのことでした。
ただ改正法の趣旨を考えると、適用のない契約だからということで、保険会社が変更の記載のある遺言を認めないことがありうるかというのは少し疑問のあるところで、実際にどのような動きがあるかを見ていきたいということでした。
最後に、実際に遺言で保険金受取人の変更が記載されるのは、条件付き遺言または予備的遺言の形であろうとのことでした。
これは被保険者の方が亡くなる前に保険金受取人が死亡してしまうケースに備えて、遺言において受取人の死亡を条件として受取人を変更したり、予備的に受取人が死亡した場合の新たな受取人を指定しておくという方法です。
特に保険契約ではこうした方法を認めてないので、遺言で指定する意義が大きいだろうというお話でした。
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